- 少なくとも現状では、多くの人間によるネーミングの方が、生成AIによるネーミングよりもメリットは大きいと判断しています。根拠は以下をご参照ください。
生成AI vs 大勢の人たち。ネーミングに強いのは?
生成AIによるネーミングと、大勢の人たちによるネーミングでは、ざっと以下のような違いが生じます。
- 提案の量
数百程度なら瞬時に出る - 提案の質
プロンプトを工夫しない限り、単純な関連語句の組み合わせ以上の案は出ない - イベント性
なし。基本的に命名者ひとりで完結してしまうため。 - 説得力
機械的に生み出された名前は、たとえ良いものでも素直に採用しづらい
- 提案の量
報酬額または参加者数次第 - 提案の質
報酬次第で、コピーライターその他ネーミングのプロも参戦してくれる - イベント性
名前募集イベントとしてSNS上で盛り上がりやすく、初期ファンも見つかる - 説得力
人が「これ!」と推している、その事実があってこそ採用しやすい
提案の量
生成AIはプロンプト(指示)を与えれば、それに沿って50でも100でも瞬時に提案してくれます。このスピード感こそ、生成AIが持つ最大の強みでしょう。単位時間あたりの提案数で人と生成AIが勝負をした場合、ここは生成AIが勝ると思います。
提案の質
生成AIにネーミングを任せた際にどれだけ良い案を出せるかは、結局のところプロンプトを操る人間の技量によるところがあります。
ぶっちゃけ、ネーミング対象についての理解を深め、対象顧客のインサイト(≒潜在欲求的なもの)をしっかり掴んでいる人が生成AIにおいてプロンプトを上手に操れば、生成AIは結構良い仕事をしてくれます。
一方、人間による提案の質はどうかというと、これは現金なハナシですけど、報酬の額によるところも大きいかと。なぜなら、報酬額が大きくなれば現役のコピーライターをはじめとするプロも本気で参戦してくれるようになるためです。
もっとも、名前募集の各参加者さんがアイデア出しにAIを用いることは充分に考えられます。せっかく名前募集プロジェクトを有償で立ち上げたにもかかわらず、集まってくる名称案が生成AIによるものばかりではお金を損した気分になってしまうでしょう。
そこで、生成AIを用いた粗製乱造ネーミングに一定の歯止めをかけるため、namaelでは1プロジェクトについて、1ユーザあたりの投稿数を最大5件まで(2024年8月現在)と制限しています。
これにより、たとえネーミングの考案過程において提案者が生成AIを用いたとしても、結局はその中から厳選された案だけが提出されることとなります。
イベント性
ここからが「人間の強み」の出るところです。
まず、生成AIによるネーミングは、命名者がプロンプトを操るだけで完結してしまいます。これで良いと思える人はこれで良いでしょう。
一方、名前募集を公の場で行った場合、それは単なるネーミングという行為を超えたファン参加型のイベントとなります。
命名という行為はそもそも、単なる思考を超えた対象に対する一種の「祈り」でもあって。
対象のイメージを頭の中で反芻し、将来の飛躍を願って名前を考える……その中で、ものすごい熱量が対象に対して注ぎ込まれます。これを人間がやる場合、まさに「魂を込める行為」なんです。
みんなで一つの対象について一生懸命に名前を考える。このイベントがもたらす盛り上がりを、生成AIじゃ生み出せない盛り上がりを! みんなでウェーイ的なものを!! namaelではたったの3,000円から始められちゃうんです! はいステマいただきました!!!!
説得力
上と少し絡むんですけど……まず、人間の認知って、同じ言葉を投げかけられた場合であっても、偉い人に言われるのとどこの馬の骨とも知れないヤツに言われるんじゃ、納得の程度に差が生じますよね。
実はこの点においても、生成AIってすごく……弱いんです。
私自身、生成AIでネーミングを行った他者の事例はたくさん調べましたし、自分自身でもサービス名に生成AIを活用できるかどうか実験を行いました。そのなかで、自分でつけたサービス名「namael」よりもっと良い名前がないかについても、もちろんいろいろ試してます。
(結局なかったから、自分で決めた名前をそのまま使っていますが……)
で、面白いことに、事例として「生成AI使って良い名前ができたよー」「いちいち悩まなくて便利ー」と発表している人は多いんですけど、生成AIが提案してくれた名前をそのまま商品やサービスにつけた、その提案で素直にリブランディングした……という人は見ないんですね。不思議と。
(※AIからの提案に自分の考えを足したものを採用した方は普通にいました)
おそらく、生成AIが機械的に出してきたネーミングには「熱量」がないからでしょうね。
一方、人間が名前を「選び」、「使う」という行為には大きなリスクが伴います。極端なことをいえば、ネーミングの対象がこれから起業する会社名などであれば、「その名前に命運を賭ける」のと同義になるでしょう。
そういった事例の中には、少なくとも私から見て
↓ ↓ ↓
「うん、その(AIが出してきた)名前いいですね。いまあなたが使ってるサービス名の万倍いいと思います。早く変えた方がいいと思います」
……と言いたくなるものもいくつかありました。
たとえ良い名前がでてきても、「生成AIが機械的に出してきただけ」という事実が、それを選ぶ際に消極的な心理バイアスをかけてしまうのでしょうか……。
どうやら生成AIを使うというプロセスを経たばかりに、せっかく良い名前を導き出せているのにもかかわらず、それを思い切って採用する勇気が出ない……そんな逆説的な事態が起きるようなんです。
結局、生成AIが出してきた名前を「これいいね!」とネタ扱いで楽しむことと、その名前を実際に選び、使って、自身や仲間の命運を託すことは、まったく次元が違うハナシなのでしょう。
そのことは頭に入れておいた方がいいと思います。
個人的には、自分で思いついて「うぉおおおおお!」と電流が走るか、誰か他の人がネーミングしたものであっても当の命名者が「これしかねえっす!!」と言って強く推しているか……命運を託す対象を選ぶには、そういった「説得力」「圧」「パワー」「選んで後悔しないだけの強い納得」ってモンが必要じゃないかなって思いますね。
そんなワケで、
「集まる名称案の質」、「イベント性」、最終的に使うか否かを決める際の「説得力」。
少なくとも上記3点において、クラウドネーミングには生成AIに対する明確な優位性があるといえるでしょう。