ネーミング道場 第8回 発想法④キーワード変異法

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 良いネーミングを考えるための発想法④ではキーワード変異法を紹介します。

 ネーミングの素材となっているキーワードに様々な方法で変更や修正を加えつつ、オリジナルなネーミングへと仕上げていく手法です。

 特定のルールに従ってキーワードに変更を加えるこのやり方は、生成AIとの親和性も高いといえます。

 キーワードの変更や修正にはいくつかのパターンがあるので、ざっと紹介しましょう。

キーワードを外国語化する

 この場合の「外国語化」とは、翻訳のことではありません。

 キーワードの語尾をたとえば「○○ーノ」「○○ーナ」「○○er」「○○ist」「○○ックス」などの外国語っぽいものに変えることで、外国語っぽい語感を持たせようという試みです。

 特に日用品のジャンル名のように、そのまま商品名とするには手垢がつきすぎているような場合において、商品イメージをリフレッシュするために用いられることが多いと考えられます。

代表的なネーミング

「トロピカーナ」(Tropicana Products, Inc.)

「ムシューダ」(エステー株式会社)

「ブレンディ」(味の素AGF株式会社)
⇒Blend の語尾を「dy」に変えることで、単語の品詞を名詞⇒形容詞へと変更してイメージを表現できるようにすると共に、音の響きを良くしたもの。

生成AIを使った実例(キーワードの外国語化)

 下記のようなプロンプトを作って、ChatGPT 4oに出力させてみました。

 上の例は自分の中では「失敗例」なんですけど、「抜群」を「バツグーニャ」に変えてイタリア語風のニュアンスを出すってトコだけはいい感じかなと。

キーワードを組み替える(アナグラム)

アナグラム(anagram)とは、言葉遊びの一つで、単語またはの中の文字をいくつか入れ替えることによって、全く別の意味にさせる遊びである。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 まあ、どちらかというとアナグラムは日本のというより英語圏の文化ですが、日本語でもフツーにネーミング手法として使えます。また、順序組み換えのパターンを数多く提示させたい場合に生成AIとの親和性も高いといえるでしょう。

 ちなみに、海外に限らず日本でも普通に行われている「単語の逆さ読み」もこの中に含まれます。

代表的なネーミング

「Dakara」(サントリー株式会社)
⇒karadaのアナグラム。わかりやすく覚えやすい上、順接の「だから(=飲む理由がある)」とダブルミーニングにもなっています。

「Edwin」(株式会社エドウイン)
⇒「Denim(デニム生地)」のアナグラム。mだけ「w」に変更されているが。

「miu」(ダイドードリンコ株式会社)
miuのネーミング由来については、ダイドードリンコ株式会社のHPにて確認できます

生成AIを使った実例(アナグラム)

 アナグラムを用いたネーミングを考える場合、狙ったキーワードについて生成AIで組み換えパターンをシミュレートさせるのが効果的でしょう。

 下記は自分でやってみた一例。

 キーワードを見た時点で、人によっては「ああアレを出力させる気だな」と分かるネタなんですが(笑)。

 ……例のカッコいい吸血鬼さんの名前は出力されませんでした。

キーワードの頭文字をつなげて意味を持たせる

 いわゆる国際機関やIT用語などでよくある、英語の頭文字を並べるやつです。

 ただ、英単語の頭文字を単純につなげて名称としたところで、普通の日本人にとってはその名前の意味するところがまったく分かりません

 そのため、この手法をあえてネーミングに用いる場合、最終的な略称と構成要素たる各単語の集合体(通常は文章やキャッチコピー)の意味するところを矛盾なく調和させる必要があるでしょう。

 また、最終的な略称が普通にローマ字読み出来るモノであることも極めて重要です。ここを満たさないと良い名前の定義をハズしてしまうので……。

 ある意味、もっともセンスが問われるネーミング手法です。

代表的なネーミング

「AMeDAS(アメダス)」(地域気象観測システム・気象庁)
Automated MEteorological Data Acquisition System の各単語の頭文字。

「モスバーガー」(株式会社モスフードサービス)
Mountaion(山)、Ocean(海)、Sun(太陽)の頭文字から。

「ASICS」(株式会社アシックス)

オニツカ株式会社とスポーツウエアを手がける株式会社ジィティオ、ニットウェアを手がけるジェレンク株式会社の3社が対等合併し、世界制覇を目指して総合スポーツ用品メーカーを発足した。「もし神に祈るならば、健全な身体に健全な精神あれかし、と祈るべきだ」というラテン語”Anima Sana In corpore Sano”の頭文字をとって社名を「ASICS」とした。

出典:株式会社アシックス コーポレートサイト「アシックスのあゆみ」


経験談より

 個人的に、あまりゼロから狙って頭文字ネーミングに挑む必要はないと思います。

 なぜなら、頭文字から単語をこじつけるだけでも大変な上、さらに出来た単語自体も「良い名前」として下記の要件を満たしていないと使い物にならないからです。

  ↓  ↓  ↓

  • 語呂や語感が良い
  • 対象の良さを外すコトなく捉えている
  • 最終的な略称がきちんと読めて、かつ覚えやすい

 ハッキリ申し上げて、一生懸命考える労力に見合うとは思えません。

 ちなみに過去、私もこの頭文字ネーミングに挑戦したことがあります。

 VJ技術を使った映像的演出と殺陣を組み合わせたアクション作品を企画した際に、そのプロジェクト名として、「HALF(ハーフ)」という名前を考えました。

 「Hybrid Action Live Force」(映像とアクションのハイブリッドライブを行う集団)の略という建て付けですが、自分ではまあまあ上手くいったかと思います。ネーミングは。

 プロジェクト自体は……(遠い目)

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