良いネーミングを考えるための発想法、第3回は機能説明法。
これは商品やサービスの用途や使い方などを名前に取り入れる、あるいはそのまま名前にしてしまうという方法です。
で、ネーミングに関して多少なりとも知識がお有りの方であれば、いまの日本においてこの手法は「ある1社」のほぼ独壇場となっていることもご存知かと思います。
そう。あの小林製薬です。
小林製薬の華麗なるネーミング例(一部)
「のどぬ~る」シリーズ(綿棒、スプレー等)
「熱さまシート」
「トイレその後に」(消臭スプレー)
「ブルーレットおくだけ」(芳香剤)
「ナイシトール」
いや、見返すとホントにセンスが光りますね。特に、「ブルーレット」という言葉の後ろに「おくだけ」を一言を追加できるセンスは異常。
たぶん「ブルーレット」だけじゃ何の商品か分からないと誰かがツッコミを入れて、最後に追加したんでしょうけど。おそるべき消費者目線です。「ブルーレット」でブランド名として十分に成立してますからね。それを敢えてダサく崩してまで使い道を分かりやすく伝える方向に振り切っているワケで。
わかりやすさと親しみやすさがブランド戦略にまで到達している
小林製薬は商品単体にとどまらない、全社的に一貫した「分かりやすさ」と「親しみやすさ」重視のネーミングで、消費者の認知と信頼を勝ち取ってきたともいえるでしょう。もはや世界観にまで昇華されていると思います。
それと、あまり言及している人が多くないんですけど、扱う商品が薬品や健康食品等であることから当然に薬機法との絡みがあるはずなんですね。
商品の性質上、確実性を謳ったり品質をことさらにアピールしたりしてはいけない中で、純粋に役割や機能を説明したり、「ナイシトール」に至ってはただの造語と言い張れる程度に言葉を略したり(笑)。ナイシトールは仮にそのまんま「ナイゾウシボウトール」だったら薬機法アウトだと思います。
分かりやすさと親しみやすさを押し出しつつ、規制を華麗に回避した上で市場にリリースしているのですから、その試行錯誤っぷりは想像以上だと思います。
実は、無形サービスにこそ効果的な手法だったり
で、別に小林製薬を礼賛することがこの記事の目的ではありません。
たとえば、「まるでこたつソックス(岡本株式会社)」も機能説明法によるネーミングだといえるでしょう。こちらは「まるでこたつのように暖かい」という顧客側が感じるイメージを名前にしたものです。
ただ、実はこの「機能説明法」が真に効力を発揮できるのは、商品よりも、むしろサービスやソフトウェア(スマホアプリも含む)だったりします。
なぜなら、サービスやソフトウェアには「形がない」からです。
商品はぶっちゃけ見た目で用途が分かることもあります。たとえば絆創膏は、商品写真やイラストを見ればそれが絆創膏であり、傷口にかぶせて貼るモノだと分かるでしょう。「熱さまシート」でさえ、仮に商品名が違ってもイラストがあれば用途は分かります。
が、サービスはこうもいきません。
特に今までに例のない画期的なサービス、スマホアプリのような特定の機能に特化したアプリなどでは、その名前から用途や機能が想像できないと、周知させるためのハードル(広告費や手間)が恐ろしく高くなってしまいます。形がないからこそ、商品名がそのまま説明の役割を果たしている状態がベストプラクティスとなるワケです。
namaelも機能説明法によるネーミングです
ちなみに、ここで手前味噌なんですけど(笑)namael(ナマエル)も機能説明法に由来したネーミングです。
「名前を得る」⇒namael なので。
上のような理屈で、無形サービスだからこそ名前を聞いただけで「ああそういうサービス!」と分からなきゃダメだと思い、強く意識しました。
あとはダブルミーニングというか、語尾に「–el」を使っていることから「名前の天使様」という意味も込めてあります。ちなみに、サービスロゴはこっちを意識していて、沢山の候補ネーミングの中から「コレ!」と一つをえらんでマルを付ける動的なイメージを図案化したものです。
生成AIの利用に関して
おそらくこの機能説明法は、生成AI(ChatGPT等)とはもっとも馴染みが悪いと思います。
そもそも機能や使い道、お客様の感想といった要素は、主に自社内での会議やお客様へのアンケート、ヒヤリングといった現実世界でのフィードバックによって明らかになるものだからです。
これらは取り違えてしまうと分かりにくさにつながったりお客様の誤解を招いたりするので、生成AIに列挙してもらうのは(個人的に)避けるべきだと思います。