以下は、キーワードに様々な演出(擬人化、数字の付与等)を施すことで、親しみやすさや信頼性を高めるネーミング手法です。
擬人化法
名前の元となるキーワードに「くん」「さん」「ちゃん」「太郎」「子」「ミスター」「ミス」「ミセス」、その他役職(社長、部長、奉行等)などを付与することで、主に親しみやすさを付与したい場合に用いられることの多いネーミング手法です。
使いたいキーワードがいわゆる「普通名称(※)」に該当しているためにそれ自体では登録が不可能なであっても、擬人化を行うことで商標登録に必要な「識別力」を獲得できるところにこの手法(擬人化法)の大きなメリットがあります。
※「普通名称」とは、取引業界において、その商品又は役務の一般的名称であると認識されるに至っているものをいい、略称や俗称も普通名称として扱います。また、「普通に用いられる方法」とはその書体や全体の構成等が特殊な態様でないものをいいます。
(例)指定商品「アルミニウム」に使用する商標として「アルミニウム」または「アルミ」を出願した場合
特許庁ホームページ「出願しても登録にならない商標」より抜粋
ちなみに、亜種として人の名前とジャンル名等のダブルミーニング(要はダジャレ)になっているパターンも存在します。
代表的なネーミング例(擬人化法)
「ガリガリ君」(赤城乳業株式会社)
「キャベツ太郎」(株式会社やおきん)
「ミスタードーナツ」(株式会社ダスキン)
「勘定奉行」(株式会社オービックビジネスコンサルタント)
「ケイコとマナブ」(株式会社リクルート)
生成AIを利用したネーミング例(擬人化法)
ネーミングの元となるキーワード(下の例では「トマト」)に、愛称や敬称、役職名などさまざまな要素を付与させることで、多数の候補を出すことができます。
↓ ↓ ↓
そして結果は……
このように、非常に簡単な指示で多数の候補案を出すことができます。
オノマトペ法(擬音語、擬態語)
オノマトペとは、擬音語や擬態語のことです。
具体的には、「(雨)ザーザー」「(犬)ワンワン」といった音を表す言葉が擬音語、「(納豆)ネバネバ」「(星)キラキラ」といった、様子を表すのが擬態語となります。
日本で暮らしている人は全世代的にマンガの影響を受けているため、ゴチャゴチャと言葉を尽くして説明するより、こういったオノマトペを効果的に用いた方がかえって「伝わる」ケースも多いです。
たとえばですが、「スラリ……!」と書いてある文字を読んだら、時代劇とか好きな人でしたら特に説明などせずとも、身構えた侍が鞘から刀を抜いている情景がすぐに浮かぶのではないでしょうか。
代表的なネーミング例(オノマトペ法)
「ゴキブリホイホイ」(アース製薬株式会社)
「ミルミル」(ヤクルト本社)
「プッチンプリン」(江崎グリコ株式会社)
⇒容器背面にある爪(突起)をプチンと折ることで容器から皿の上へ簡単に取り出せるという体験(今風にいえばユーザ体験、UX)から命名されています。
生成AIを利用したネーミング例(オノマトペ法)
ネーミングの元となるキーワード(下の例では「トマト」)にさまざまなオノマトペを付けるよう指示を出すだけで、多数の候補を出すことができます。
↓ ↓ ↓
オノマトペについても、非常に簡単な指示で多数の候補案を出すことができます。
数字法
名称の一部や全部に数字を取り入れたネーミング手法です。
主に栄養や分量が多いことを示したり(例:x2、ダブル)、唯一性や希少性を示したり(例:ナンバーワン、オンリーワン)、「糖分やカロリーがゼロである」特徴を示したり、完璧であることを示したり(例:100, 100%)するために使われることが多い手法です。
とはいえ、会社名を数字の読みで表記し直したものその他、考え方次第でバリエーションはいくらでも生まれます。
代表的なネーミング例(数字法)
「コカ・コーラ ゼロ」(日本コカ・コーラ株式会社)
「セブンイレブン」(株式会社セブン―イレブン・ジャパン)
⇒もともとは「朝7時から夜11時までの営業時間」に由来したネーミング。ただ、語呂が良くすでにブランド名も定着しているためか、現在でもそのまま使われています。
「十六茶」(アサヒ飲料株式会社)
⇒16種類の成分の数からネーミングされたもの。
「109」(東急株式会社)
⇒トーキュウの言葉に数字をあてたもの。
生成AIを利用したネーミング(数字法)
生成AIで数字法を用いたネーミングを行う場合、すべきことはキーワードの前後に数字を組み合わせるだけです。そのため、単純に「数を出させる」という意味では生成AIとの愛称も良いと思います。
ただ、考えなしに0の1の10の100の億のと機械的に様々な数字を組み合わせることは通常「ない」と思われます。商品やサービスからお客様に感じて欲しいイメージを決めてから指示を出すことになるでしょう。
たとえば、余分なモノや入って欲しくないもの(カロリー等)が入っていないことを示したいのであれば、ゼロを組み合わせることが効果的です。分量的なお得度をアピールしたいのであれば、お得度に応じて1.5倍、2倍といった数字を組み合わせることになるでしょう。
こうした準備を経た上で、決めた数字をキーワードに組み合わせる……と、実はもうキーワードと組み合わせる数字が決まっているため、ここからわざわざ生成AIを使うまでもなかったりします。
(※すでに組み合わせのパターンがだいぶ絞り込まれているためです)
ダジャレ法
キーワードを表す音に商品・サービスの中身を表す漢字を当てるなどして、ベタなダジャレからネーミングする方法です。
通常、商品やサービスを自前で開発し、それを売りたいと考えた場合、大抵の人は「ダサいもの」として市場で評価されたくはないと考えます。
そのせいか、中途半端にオシャレなイメージを狙ってしまい、結果としてありきたりになったり顧客の記憶に残らなかったりすることがしばしばあります。
ダジャレ由来のネーミングは確かにダサく感じられ、失笑されることもしばしばなのですが、一方で覚えやすさや親しみやすさという点ではピカイチです。
加えて、ダサいが故に(同業内でダジャレネーミングを使ってくる)ライバルが少ないため、開き直って用いるようにすると市場で独自の地位を築くことができたりします。
代表的なネーミング例(ダジャレ法)
「コリャ英和!」(ロゴヴィスタ株式会社)
「草刈機まさお」(株式会社筑水キャニコム)
「ケイコとマナブ」(株式会社リクルート)
「通勤快足」(アサヒシューズ株式会社)
生成AIを利用したネーミング例(ダジャレ法)
生成AIにキーワードを渡して「これでダジャレを考えてくれ」と頼むと、結構サムい(=笑えない上に使えない)結果が返ってきます。ChatGPT4oの場合、少なくとも日本語についてはあんまりダジャレを考えるのが得意なようには思えません。
以下は実例(笑)。
↓ ↓ ↓
他にもいくつか試しましたが、レベル的には変わりませんでした。まあ、ネーミングのアイデア出しとして使うにはお世辞にも「生成AIとの親和性が高い」とはいえません。
これは筆者の私見に過ぎませんが、ダジャレでネーミングをしたいと考える場合にもっとも容易なアプローチは、「キーワードとなる言葉(=伝わってほしいイメージ等)に別の漢字を当てる」というものです。
「通勤快足」も「こりゃ英和!」も、基本的にはこの手法(漢字の当て方の妙)ですし。