ネーミング道場 第6回 発想法②連結法 with 生成AI

すべての記事

 良い名前を自分で考えつきたいけど、アイデア出しがなかなか難しい……! とお悩みの方に向けた、ネーミングの発想法を紹介していくシリーズ。第2回は「連結法(合成法)」です。

連結法(合成法)とは?

 2つ以上の概念や単語を組み合わせて新しい語感のネーミングを作り出す方法です。

連結法(合成法)で生まれたネーミングの例

サランラップ(旭化成ホームプロダクツ株式会社)

 もともと軍事向けの防水フィルムとして開発された透明ラップに新しい用途が見つかり……

 あとは公式の紹介を読んでいただくのが確実かと思います。

  ↓  ↓  ↓

ある日、フィルム製造メーカーの職長を務めていたラドウィック、アイアンズの二人は、妻を伴って近所の人々とピクニックに出かけました。ラドウィックの奥さんは、たまたま夫が会社で作っていたフィルムにレタスを包んで持っていきました。
すると「このラップとてもきれい。どこで手に入れたの?」
「私も欲しい。どこで売っているの?」と大変な評判になってしまいました。
そこでラドウィック、アイアンズの二人は驚き、早速翌日上司に報告し、クリング・ラップ・カンパニーを設立して開発に着手し、ダウケミカル社から取り寄せた樹脂のロールを紙管に巻き付けて箱詰めし、サランラップ第1号が完成したという訳です。完成すると近郊の都市でも試験的に販売され、結果は上々でした。名前もラドウィック、アイアンズの二人の妻サラ(Sarah)とアン(Ann)にちなんで「サランラップ®」と決定されました。

旭化成ホームプロダクツ株式会社 サランラップ®の豆知識
https://www.asahi-kasei.co.jp/saran/products/saranwrap/history.html

 2つの言葉を合成したという成立過程よりも、2人の奥様であるサラとアンに着目してネーミングしたというセンスに脱帽しますね!

カラムーチョ(株式会社湖池屋)

 これは日本語の「辛い(からい)」と「ムーチョ(mucho。スペイン語で「たくさん」の意)」の合成語。

 「『たくさんの辛さを楽しんでほしい』との思いを込めた」ネーミングだそう。

グルーポン(Groupon, Inc.)

 グルーポンはもう日本撤退しちゃったので補足が必要ですね。

 「ある商品を、みんなで注文すると安くなる」クーポンを発行していた会社。要は、購入者の頭数を確保した上で大胆に値引きするというビジネスモデルだったワケです。(なぜ日本から撤退したのかはここでは無関係な話wwww)

 これは分かりやすく「Group」と「Coupon(クーポン)」の合成語です。

鼻セレブ(王子ネピア株式会社)

 由来的にはわかりやすいですよね。「鼻」+「セレブ」。

 ただ、この商品はネーミング変更によって売上が爆上がりしたリブランディング事例として「まるでこたつソックス」と双璧をなすモノ。なので、「鼻セレブ」という名前そのものより、この名前に至ったエピソードやネーミング変更後の展開を王子ネピアさんの公式サイトで確認してほしいです。

  ↓  ↓  ↓

ネピア 鼻セレブ
https://e-nepia.com/products/hana-celeb/

意外と生成AIでの再現が難しい「連結法(合成法)」

 これはいくつかのケースで私が実際にChatGPTやClaude3.5といった生成AIで「2つ以上の単語や概念を合成して新しい言葉をつくる」実験をした結果からなんですけど……

生成AIが単語や概念を組み合わせるときのクセ

 「複数の単語や概念を組み合わせて新しい言葉を作ってくれ」という命令を生成AIに出した場合、そのアウトプットには以下のような傾向があると覚えておきましょう。

  ↓  ↓  ↓

基本的に、2つ以上の単語を「そのまま繋げてくる」だけ

 生成AIに『「○○」と「××」の2つのイメージを合わせた新しい名前を考えてください』みたいな指示を行うと、アウトプットは基本、「○○」と「××」に関連する語句を機械的に組み合わせたものばかりになります。

 詳しくは過去記事「ネーミングは生成AIにお任せ?①」を参照してみてください。内容は、生成AIにネーミングをやらせてみたときの顛末です。

特に指定しない限り、1つの言語でしか組み合わせてくれない

 上で紹介した合成法の例として「カラムーチョ」を紹介しましたが、日本語の「辛い」とスペイン語の「mucho(たくさん)」を上手に引っ張るようなことは基本、してくれません。

 日本語なら日本語同士の組み合わせばかり、英語なら英語同士の組み合わせばかり考えてきます。

日本語と英語では、組み合わせ方の「レベル」も違う

 生成AIに合成法を使って新しい言葉を生み出させようとする場合、使用する言語によって結果に大きな違いが出ます(少なくとも2024年夏時点では)。

 まず、ChatGPTその他のAIはそのほとんどが英語圏のサービスだからか……英語であれば、単語を構成する接頭辞や接尾辞をつけたり外したりしながら、2つ以上の単語をそれなりに上手に組み合わせた造語を生み出すことも可能です。

 実際、namael(このサービス)の名前を決める際にも「名前」「天使」というキーワードで造語が他に作れないか、生成AIにいろいろプロンプトを打ち込んで試しています。

 結果、「Namiel」(naming + angelの造語)という合成語を作り出すことができました。ま、声に出して読んだときにネイミエル、ネミエルといった「音」が陰気な感じで嫌だったため、採用しませんでしたが(笑)。

 一方、日本語で同じこと(=単語の有機的な合成)をさせようとした場合、構成要素となる単語を端折ったりブツ切りにしてまで合成語を丁寧に作るようなことはなかなかしてくれません(まあ、「もっと自由に発想しろ」と注文つけるとか、プロンプト次第でやってくれるかも知れませんが……)。

 まあ、仕方ないんです。

 造語って、そもそも生成AIのデータ基盤である学習データの中にないですからね。「無いものを生み出せ」という時点でけっこう無茶な注文なのかも……です。

結論

 2つ以上の言葉を合成して新しいネーミングを考える場合、生成AIのアウトプットをそのまま採用しようとは考えず、そのアウトプットの中から「直せば化けそうな案」を抽出し、さらに別の手法(翻訳法)で良い名前が生まれないか試す……といったアプローチが必要になると思います。

タイトルとURLをコピーしました