ネーミング道場 第5回 発想法①翻訳法 with 生成AI

ネーミング道場5発想法①翻訳法 すべての記事

 良い名前を自分で考えつきたいけど、アイデア出しがなかなか難しい……! とお悩みの方に向けた、ネーミングの発想法をこれからいくつか紹介していきます。

 その手始めは、誰でもできる一番カンタンな「翻訳法」から。

翻訳法とは?

 日本語としてはありきたりな言葉であっても、それを外国語に翻訳した場合は日本人が知らない言葉であることがほとんど。そこで、何気ない言葉を様々な外国語に翻訳し、その中で語感が良い言葉を見つけるという、主要なネーミング方法のひとつです。

翻訳法が採用されたネーミングの例

メルカリ 株式会社メルカリ

 ラテン語で「商いする」「マーケット」を表す言葉「mercari」から。

ヤクルト 株式会社ヤクルト本社

 公式サイトの回答より(↓)

Yakult Q&A

Q1.ヤクルトの名前の由来は何ですか?

A.エスペラント語でヨーグルトを意味するヤフルト(jahurto)という言葉を言いやすいように変更考案した造語です。

エスペラント語は1887年、ポーランド人のザメンホフという人が、一種の世界共通語として考案した言語です。

「ヤクルト」は当社が商標登録したものであり、乳酸菌飲料の一般名称ではありません。

(引用元:宇都宮ヤクルト販売株式会社ホームページ)

 ちなみに、ヤクルト系では「ジョア」も翻訳法由来のネーミング。フランス語で「喜び(joie)」の意味から。

 他にもあります。

ピノ(PINO)森永乳業株式会社

 スペイン語で「松ぼっくり」の意味。

FRISK(フリスク)ペルフェティ・ファン・メレ社

 口の中がスカッとするやつ。「FRISK」はノルウェー語で「フレッシュ」を意味する言葉です。


 ……とまあ、やり方的には非常にカンタンですが、意外とこの手法でネーミングされた商品やサービスは多いことが分かるかと思います。あと、ヤクルトがちょうどそのパターンですが、翻訳で出てきた外国語をそのまま使うだけが全てではありません日本人が言いやすいように「少しもじる」といった工夫も効果的。

 また、複数の翻訳語を合成して新しいネーミングを生み出す手法(翻訳合成法とでもいうのかな?)もネーミング発想法の王道のひとつです。

メリットとデメリット

 翻訳法のメリット・デメリットになります。

メリット
  • 誰でもカンタン
  • 生成AIとの相性もよい
  • 言語を増やせばバリエーションも出せる
デメリット
  • カンタンであるがゆえに、すでに誰かが使用している可能性がある。
  • 同様に、すでに他人が(自分の指定商品・サービスの類似範囲で)商標登録している可能性もある。
  • 語感や雰囲気に気を取られ、多くの人がそもそも読めない名前を採用してしまう可能性がある。

 日本語や英語で身近な言葉を別の国の言葉に変換するだけなので、すでに自身の指定商品・サービスと同一・類似範囲において他人によって使用されていたり、商標登録されていたりする可能性も高いことが欠点といえるでしょう。

 ただ、なんといってもカンタンですし、多言語への翻訳はChatGPTその他の生成AIを使えば非常に効率的に行えますので、ネーミングの手始めに試してみる価値は十分にあるでしょう。

生成AIで翻訳法のネーミングを行うプロンプト

 生成AIが出てくるまではネーミング辞典(様々な単語が主要数カ国の言語に翻訳されている辞典)やGoogle翻訳でチマチマ行う必要もあった翻訳法ですが、生成AIの場合、プロンプト(指示)を一度用意してしまえば、あとは様々な言葉で繰り返すだけのカンタンさになっています。

参考例:「友達」という言葉を翻訳法にかけてみる

 ChatGPTやGemini、Claudeといった生成AIに対して、こういった命令を入れてみましょう。

  ↓  ↓  ↓

「友達」という言葉を、英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語、中国語、ロシア語、イタリア語、ポルトガル語、アラビア語、ヒンディー語、ラテン語、エスペラント語の各言語に翻訳してください。その際、必ずカタカナでの読み方も一緒に表記してください

 ご自分で行う場合は、「友達」の部分をあなたの商品・サービスのイメージに関連するさまざまなキーワードに入れ替えて試してみてください。ノルウェー語やルーマニア語といった他の言語をもっと追加するのも良いでしょう。

 こんな感じでズラッと出してくれます(例はChatGPT4o)。

  ↓  ↓  ↓

 「友達」の部分を、あなたの商品・サービスのイメージに関連するさまざまなキーワードに入れ替えて試してみてください。

「読めない言葉」を採用しないように注意しましょう

 上のプロンプトでは「カタカナによる日本語表記」を出力するよう求めました。これは自分で読めないのでは選べないというのもそうですが、何よりも「多くの人が読める言葉であるか」を確認するためです。具体的には、原語をフツーにローマ字読みしたときのカタカナ表記と実際の読み方が一致しているか、です。(アルファベット表記でない言語はちょっと別)

 たとえば、フランス語やドイツ語は文字こそアルファベットですが、単語の読み方はは必ずしもローマ字読みと一致しません。このとき、多くの日本人がすんなり読めるよう、カタカナを名称として採用していれば特に問題ないのですが……。

 ここでカッコつけてアルファベット表記を採用し、かつ見た目重視でフリガナも振らないなんてやってしまうと……単なる読めない名前の出来上がりです。

 読めない名前は当然に覚えることもできないため、良いネーミングから確実にハズれてしまいます。ぜひ気をつけていただきたいところです。

タイトルとURLをコピーしました