審判とは? 審判請求とは?

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 商標法にいう「審判」とは、主に商標登録出願につき特許庁が下した拒絶査定について不服を申し立てたり、登録済の商標についてさまざまな理由に基づいてその取り消しを申し立てたりする手続を指します。

 通常、商標登録出願を行った際には審査官による「審査」が行われます。が、審判の場合は通常、審査官よりもベテランの人が事件単位で「審判官」となり、この審判官が複数集まって審理し、最終的に「審決」を行います。

商標法における審判

  1. 拒絶査定不服審判(商44条)
  2. 補正却下決定不服審判(商45条)
  3. 商標登録無効審判(商46条)
  4. 不使用取消審判(商50条)
  5. 不正使用取消審判(商51条)
  6. 不正使用取消審判(商52条の2)
  7. 不正使用取消審判(商53条)
  8. 代理人の不正取得に基づく取消審判(商53条の2)

 羅列すると結構たくさんありますが、namaelで取得した名称を商標登録出願(あるいは商標登録)した場合に留意しておきたいのは、黄色でマークアップした4つです。

拒絶査定不服審判(商44条)

 名前がそのまま態を表しているため分かりやすいですが、要は拒絶理由を解消できないまま拒絶査定(=登録できませんという審査官からの決定通知)を受けてしまった場合に、それでもなお出願に係る商標を登録したい、できるはず! ……と考える人が請求する審判です。

 とはいえ、正直なところ、(namaelで取得するような)識別力や独自性を有する「よい名前」について商標登録出願をした場合、あまり縁のない審判だったりします。

 そもそもnamaelで報酬を出してまで募集した末にわざわざ識別力のない商標(=商3条1項3号で拒絶される商標)を採用することはまずないでしょうし、他人の商標権と指定商品・指定役務単位で抵触している(=商4条1項11号で拒絶される商標)かどうかは、名称を採用する前の調査によってかなりの精度で予測可能です。

 また、商4条1項11号に基づく拒絶理由(=他人の商標権と指定商品・指定役務単位で抵触)を受けた場合は、従来のように拒絶査定不服審判で争うよりも、R5改正で新たに導入された「コンセント制度(商4条4項)の利用を考え、相手方と許諾交渉をする方がスマートかもしれません。

商標登録無効審判(商46条)

 登録後の商標をはじめからなかったものとして消滅させるための審判です。

 主に、商標権侵害に基づく警告や差止請求訴訟、損害賠償請求訴訟等を受けた場合に、

「おいテメエの商標、そもそも商標登録の要件満たしてねえじぇねえかこの野郎! こんなゴミ商標持ち出して何ドヤ顔で『商標権侵害』だ!? ふざけろよ、このクソが!!」

 ……とまで派手にキレるかどうかは当事者次第ですが、要するに、商標権の登録要件を満たしていないにも関わらず審査の見落としなどでまんまと登録を受けた商標を使って権利行使してくる相手がいる場合に、そんな商標は無効だから取り消してくれと請求する審判です。

 ちなみに、この審判請求が認められた場合、当該商標権は「はじめからなかったものとみなされる(商46条の2第1項)」ため、かかる損害賠償請求や差止請求訴訟などを請求棄却させることができます。

不使用取消審判(商50条)

 商標の価値は、その商標を構成する名称やロゴ自体ではなく、継続的な使用によって商標に化体した「業務上の信用」にこそあると考えられています。

 逆にいうと、仮に(形式的に)商標登録をしたとしても、その後使用していないのであれば商標の財産的価値はゼロのまま。そんな、商標原簿に存在するだけで実質的な価値が何もない商標を登録されたまま残しておいても、他にその商標を真に使いたいと考える人にとっては「邪魔」でしかありません。また、価値のない商標に基づく権利行使で一般公衆が脅されたり使用料の支払いを求められたりすれば、邪魔を通り越して一種の社会悪です。

 そこで、登録済の商標であっても一定期間(3年)以上継続して不使用が続いている商標については、審判請求を行って取り消しを求めることができます。これが不使用取消審判です。

 請求が考えられるケースとしては、こんなのがあります。

  ↓  ↓  ↓

 自身の出願した商標が他人の先願商標権の一部と抵触している(商標が同一または類似&指定商品・指定役務が同一または類似)ために商4条1項11号の拒絶理由を受けている。けれど、その先願に係る商標はここ3年以上使用された形跡がない……!

 こんな感じで、形式上は商4条1項11号の拒絶理由となっているんだけど、登録されているだけで実際には使われていない。ネットで検索しても使われている形跡がない。

 出願から登録を待っている間にその商標を使ったビジネス自体が企画倒れに終わったのか、あるいはもともと「数撃ちゃ当たる」的に沢山の商標を腰溜めで出願していて、その中で使われないままになっているのか……

 特に、考えに考え抜いて生み出した商標が、こんな先願商標のせいで登録できないのは痛恨です。

 ちなみに、上でも少し触れましたが現在ではR5改正により「コンセント制度」ができたため、先願商標権者に対してコンセント制度(商4条4項)への同意を求めつつ、裏では(同意が得られなかった場合に備え)この不使用取消審判を請求しておく……といった「合わせ技」が有効になると考えられます。

不正使用取消審判(商52条の2)

 不正使用取消審判には複数の種類があり、この商52条の2は「同一・または類似の商標が複数の権利者の元で運用されている場合に、いずれかの商標権者が他の商標権者の商標と出所混同を起こしている場合に」請求される審判です。

 従来はこの審判、商標権の分割移転(=同一の商標権について指定商品・指定役務単位で他者に権利を移譲すること)がなされたあと、その当事者間で混同を生じるような使用があった場合に請求される審判だったのですが。

 R5改正で登場した「コンセント制度(商4条4項)」により、その適用範囲が広がっているので注意が必要となっています。

 要は、先願権利者との交渉により後願者が先願にかかる権利と一部抵触する商標権を取得できるようになったので、もしも両者の間で出所混同が生じた場合には、この審判の請求理由になるってコト。

 まあ、先願権利者も、さすがに出所混同が生じかねない指定商品・指定役務を扱う後願者に対して同一/類似の商標の併存なんて認めないと思いますが……。

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