ひとつの商標について指定商品や指定役務をあれもこれもとたくさん追加して出願した場合に、
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「お前 本当にこんなにいろんな用途でこの商標を使うのか? ちょっと本気で使う気あるのか、事業計画書とかいろいろ見て確認していい?」
……という感じで、特許庁から提出を求められる(ことがある)書面です。
どうしてこんな制度があるのか
日本の商標法では商標登録出願人による「使用の意思」さえハッキリしていれば、出願時点で当該商標をまだ使用していないことそれ自体は拒絶理由となりません(商標法3条1項柱書)。
ですが、それをいいことに「じゃあ、この世のありとあらゆる製品やサービスについて、この商標を登録しますね~ え? ちゃんと使うのかって? イヤだなあ。使うに決まってるじゃないですかw」とかやられると、その言葉をみんなが自由に使えなくなって困ります。
そもそも商標登録とは、「自分が使用する」商品やサービスの名前やロゴ等を他人に勝手に真似されることを防ぎ、使用し続けることでお客様からの信用を築くために行うものです。
自分で使う気はない。けど、まだ誰も登録していないならオレが先に登録して、この商標を使いたいと言ってくる連中から使用料を取って儲けてやろう! ……みたいなことを考えるクズ共に小銭稼ぎのお墨付きを与える制度ではありません。
そのため、自分で使用する気もない指定商品や指定役務をあれもこれもと書き連ねて出願すると、「うわあ……またこの手のアホが来た……」「やれやれだぜ」といった感じで、審査官から物言いが付くわけです。
具体的な該当ケース
具体的な該当ケースとしては、以下のようなケースがあります。
商標審査基準第1二、2.(3)
商標審査便覧 | 経済産業省 特許庁
(ア) 第2条第2項に規定する役務(以下「小売等役務」という。)について
①「衣料品、飲食料品及び生活用品に係る各種商品を一括して取り扱う小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下、「総合小売等役務」という。)に該当する役務を個人(自然人をいう。)が指定してきた場合。
② 総合小売等役務に該当する役務を法人が指定した場合であって、「自己の業務に係る商品又は役務について使用」をするものであるか否かについて職権で調査を行っても、出願人が総合小売等役務を行っているとは認められない場合。
③ 類似の関係にない複数の小売等役務を指定してきた場合。
簡単に言えば、①②は個人が「デパートやら百貨店の業務」を小売等役務に指定してきた場合です。
個人がデパートなんてやるかボケェ! オールマイティ狙いで登録しに来んなや!! ってコト。
③はまあ、あんまり欲張りなさんな……ぐらいのニュアンスでしょう。
で、(ア)があるぐらいなので(イ)もあります。
商標審査基準第1二、2.(3)
商標審査便覧 | 経済産業省 特許庁
(イ) (ア)を除く商品・役務の全般について 1区分内での商品又は役務の指定が広い範囲(著者補足:23以上の類似群コード)に及んでいる場合。
35類以外の区分であっても、1区分の中にあんまり沢山の指定商品や指定商品を含めていると、審査官からのツッコミが入っちゃうぞ♡ といってます。
もし、使用の意思確認を求められたら?
「使用意思を確認できる資料」を提出する必要が生じます。
事業計画書だったり、実際に使用の準備をしていることを証明できるチラシやホームページ、店舗や店内の写真だったり……。要は「ちゃんとその商品・役務について出願商標を使う根拠ありますから!」と主張できるだけの証拠を揃えて特許庁に提出することになります。
で、こういう物言いは実際のところ「拒絶理由通知」として来るので、指定期間内に応答する必要があります。なので、対応は完全にプロの仕事となり、無償で弁理士が受けることはまずありません。
ちなみに、こんなのは出願前に弁理士に相談していただければ「35類にちょっと書きすぎてますね。絞りましょう」とかアドバイスしてもらえるので、普通に回避できます。